2.経営指南

コンプライアンス経営 ~企業と経営者を守るために~

Ⅰ.コンプライアンス経営とは
 近年、企業や組織等において多くの不祥事が相次ぎ、社会の批判を浴びています。そこで「コンプライアンス」という言葉が注目されるようになりました。「コンプライアンス」とは、法令・倫理を遵守するための理念・目標であり、「コンプライアンス経営」は、「遵法経営」と訳されます。
 コンプライアンス経営は、企業をとりまく法律や倫理を守ることだけではありません。ルールの目的や理念を理解し、企業の目的・存在意義に照らして、新しい基準を作るなど自主的に臨機応変に対応していくことが必要です。業界の常識であるが一般的には問題があるような事柄は注意を要します。商工ローンの過酷な取立てや建設業界の談合などは、その業界では当り前のこととして認識されていた面があります。また、企業の不祥事でも、「バレなければ問題無い」といった風潮は、一大企業をも解体させる結果となります。企業は営利目的の組織であり、利益をあげなければ存続できません。しかし、顧客のために有益な商品やサービスを提供する目標を見失えば、組織を維持することはできません。法律に違反しなくても、常に、道義的、倫理的にどうかの観点からも検討する必要があります。企業活動の原点に立ち帰った場合、このコンプライアンス経営は、経営理念の中核に位置づけられるべき考え方です。

Ⅱ.コンプライアンス経営の導入方法
 第一に、基本的な経営方針として、違法なことを回避し、社会的責任をまっとうすべく、企業倫理に配慮することを明確にする(基本方針の決定)。第二に、この経営方針を実践することを会社組織のルールとして明確にする(ルールの明確化・周知徹底)。第三に、コンプライアンス実践のためのトップ直轄の組織体制を設ける(組織体制の整備、再構築)。第四に、この組織体制を動かしながら社内に徹底させ、ルールの見直しを行う(実践・チェック・再検討)ことが必要です。

Ⅲ.コンプライアンス経営の主な留意事項
①公私混同
 経営者の公私混同を無くすこと。また、役人に対するワイロや接待等、公務員の公私混同に働きかけることは、公正な自由競争を歪め、自らの競争力をも弱める結果となります。
②安全・適切かつ十分な説明のある商品提供
 とにかく儲かればよいという考え方をなくすこと。顧客側から見て、代金に見合った商品やサービスを提供できなければ、そのこと自体が顧客の財産を不当に奪うことになります。トラブルの早期処理と原因究明、再発防止に取組むことが重要です。
③不正競争
 様々な規制緩和の一方で、独禁法など不正競争を取り締る法律が強化されています。独禁法違反は、訴訟リスクだけでなく、世論の批判、マーケットの厳しい評価など、様々なトラブルや不利益をもたらします。不正競争防止法や業界の表示に関する公正競争規約などにも注意する必要があります。
④知的財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権、 著作権等)
 IT関連事業の伸びの中でソフトの違法コピー等、知的財産権に関する意識が高まっています。知的財産権を取得し、その権利を守るとともに、他社の権利を侵害しないように注意する必要があります。
⑤労使関係
 従業員の基本的人権を守ること。女性・高齢者・外国人等の差別をなくし、適正な人事評価・サービス残業・不当解雇・セクハラ等を排除することが必要です。
⑥税法関連
 脱税は本来支払う必要のない加算税が課されるほか、企業イメージに大きな打撃を与えます。租税倫理の強化、使途不明金の排除、節税と脱税の違い等の認識が必要です。
⑦会社法
 粉飾決算、利益供与、違法配当等、商法違反をしないことは基本中の基本です。
⑧情報管理
 企業情報を迅速的に開示し、経営の透明性を図るとともに、企業秘密の漏えいを防止する必要があります。

Ⅳ.コンプライアンス経営の展望
 コンプライアンス経営は時代の流れです。内部告発を許容する考え方も広がってきています。不祥事を起こす会社は、「起こるべくして起きる体質」のようなものがあり、企業トップの認識の甘さと、担当者の弱さが共通する特徴です。企業と経営者を守るためには、コンプライアンス経営に向けた経営者の自覚と実行力が不可欠となります。

投稿者 hiroyasu : 2005年11月09日 15:29 | コメント (0) | トラックバック (0)

債権管理のポイント

1.倒産被害の予防策 バブルの崩壊という言葉を耳にして久しいが、近年は景気が上向きになる兆しが見受けられる一方で、企業の倒産は後を絶たない。企業の倒産は、銀行、取引先をはじめ、その会社を取巻く多くの利害関係者に多大な損害をもたらす。債権管理の第一の目的はこのような取引先の倒産による被害を防止することにあるといっても過言ではない。この倒産による被害を防止するにはどうするか。日頃注意しておかなければならないことは、「信用調査の徹底」と「倒産兆候の把握」である。 ①信用調査の徹底 企業の掛け取引は、商慣行の中で当り前のように行われているが、これはその対価に相当する資金を貸出すことと意味は同じである。したがって、取引を行う場合、得意先の支払能力を確かめておくことは当然必要となる。信用調査では、経営の三要素である、ヒト、モノ、カネを的確に把握しなければならない。一般的に、会社の経歴、資本金、財産・損益状況、税務申告状況、取引銀行、主要取引先との取引条件、登記簿謄本、会社の経営方針、社長個人の資産や経営能力、人柄や人格、業界紙の信用情報、信用調査機関のデータ等が利用される。これらの資料や情報から貸倒れの危険性を予測し、与信限度や決済条件、取引保証金、担保権設定の要否等を検討する。ただ、入手される決算書等は粉飾の可能性がある点注意を要する。「企業は人なり」といわれ、経営者の資質や人格は、常に考慮すべき重要なポイントになる。この信用調査は「転ばぬ先の杖」として、債権管理上重要な役割を果たすものである。 ②倒産兆候の把握企業の倒産は、販売不振を原因とするもの、過大な設備投資を原因とするもの、放漫経営を原因とするものなどいくつかのパターンがある。いずれにしても倒産の危険があると、財務指標にはそれなりの結果がでてくる。しかし、財務指標に頼らなくとも、常に気をつけていれば以下のような兆候が現われることが多い。信用不安の噂、社長や経理責任者の不在、経営者の交代、幹部社員の辞職、社員の態度の変化、主要な仕入先や納入先の変更、得意先の再販売先の倒産、親会社・子会社の倒産、多額の返品・クレームの発生、支払期日の長期化、手形のジャンプ、融通手形の割引、メインバンクの変更、不動産の売却、社名変更、減資等。したがって、特に、営業マンは営業活動のなかでこのような情報を入手できるよう細心の注意を払い、そしてその報告が正確に伝達される体制が必要である。2.日々の債権管理債権管理上注意が必要なのは、得意先の倒産だけではない。企業活動のなかで、日々の債権管理は大変重要であり、経営者は常に意識してその管理状況を把握しておく必要がある。そのポイントをいくつかあげてみる。 ①債権管理に対する認識の徹底と販売方針の明確化営業マンは売上をあげることにのみ全力を傾注し、債権管理のことは全く意識していないことがよくある。いくら商品を売っても代金の回収がなければ、企業は倒産する。販売される商品、市場、販売方法、販売価額、代金回収条件といった販売方針を明確にし、与信限度を決め、販売から回収までを念頭においた営業活動を実施していく必要がある。 ②契約書の作成による取引条件の明確化 販売価格や値引・割引・割戻し・返品等の条件、納入・回収条件、検収期間、与信限度額、担保や保証人及び取引保証金の受入れの要否など、販売取引に関する契約書を作成しておく。力関係により、また、業界の慣習により契約書の作成は困難なケースもあるが、事前に取引条件を明確にすることで、取引先とのトラブルによる不良債権の発生を防止できる。 ③各部門の業務・責任範囲の明確化 多額の債権を適切に管理するため、販売取引に関する職務権限を営業・管理・商品・システムといった異なる部門で分割する。つまり、各業務を複数部門で責任関係を明確にした上で分担し、相互にチェックできる等の内部牽制組織が必要である。とりわけ、営業と経理の責任関係は曖昧で、お互い責任転嫁をしやすい関係にあるため注意が必要である。 ④消込み作業自社の債権残高と得意先の債務残高について、検収明細等による消込み作業を毎月行わなければならない。これを怠っていると、消込み未済の債権がどんどん膨らみ、先方との照合ができなくなり不良債権化する恐れがある。 ⑤残高確認得意先に対し定期的に残高確認を実施する。残高確認の結果、差異がある場合は必ずその原因の調査分析を行い、自社の残高が妥当かどうかを確かめる必要がある。場合によっては、毎月請求の都度、確認することもある。 ⑥年齢調べ 債権残高を得意先別・発生月別に一覧表にし、回収の遅れている債権を認識する。毎月、又は2、3か月ごとに作成し、タイムリーな状況把握と原因分析、対策が大切である。 ⑦不正や誤謬の防止 社内において不正や記帳誤り等があると、これが不良債権となる危険がある。監督責任を問われぬためにも、職務分担制度や各担当者のローテーション、長期休暇制度導入等の予防策を確立しておく必要がある。 ⑧返品、クレーム等についての報告返品、クレームによる値引・単価訂正等については適時にこれを報告させる必要がある。迅速、かつ、適切な対応・処理に当たらないと問題の解決が遅れ、不良債権化する恐れがある。 ⑨請求管理売掛代金の請求は、正確、迅速かつ規則的に行うこと。請求書の記載誤り、請求モレ、請求方法の間違い等は会社の信用を損ない、得意先に支払遅延の口実を与える危険がある。 ⑩異常事態への対応策緊急、異常事態に備えて、弁護士への連絡等、債権の保全措置が迅速に実施できる態勢を整備しておく必要がある。3.債権管理の心構え 債権管理は、信用調査から、帳簿記帳に至るまで、企業活動の多岐にわたって関係する。そのため、経営者は、債権管理の重要性を十分認識した上で、全社的な問題として日頃から積極的に取組んでいく必要がある。販売及び回収手続に関して、明確な社内規程やマニュアルを作成し、研修を行い、組織的、効率的な運営のなされる体制が必要である。

投稿者 hiroyasu : 2005年11月09日 15:28 | コメント (0) | トラックバック (0)

 
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